湘南医療大学リハビリテーション学科作業療法専攻 医学博士 近藤昭彦先生をお招きし,以下のテーマに第11回OT研究会公開講座が開催されました。
テーマ:生活行為改善に必要な作業療法の視点~トップダウンとボトムアップの融合~
作業療法の世界では,私たちが作業療法士になった時代,約20年前になりますが,中枢神経疾患の作業療法は麻痺そのものの改善を第一に考える治療が主流でした.その治療も,セラピスト(治療者)側が中心に患者に施すものでした.
それから時は流れ,治療だけでは改善できないことがわかり,後遺症とどのように向き合い,生活や人生の質を高めていく.クライエントの作業を中心に考え,その作業が生活に結びつくようにサポートをしていくということが主流になりました.
その世界的な流れを日本作業療法士協会は「生活行為向上マネージメント」という概念で発表しました.これは,日本作業療法士協会独自の概念ではなく,過去今までアメリカやカナダで作業療法の先端を走っていた国が研究をして実践をしてきたことを取り入れた概念です.日本では実績があまりなく,「作業に焦点を当てた◯◯」や,「意味のある作業」などの言葉が一人歩きしている現状にあります.セラピストとして患者の大切な作業が生活と結びつき,少しでも生活の質,人生の質が高いことを祈り,理想とするのは悪いことではなく,大切なことですが,残念ながら理想だけでは,臨床で結果を出すこととはまったく別物だと思っています.
この現状からも,なかなか患者の生活は改善できないことが多く,セラピストは生活を,患者は身体をと,改善して欲しい考えにギャップがあること,理解が得られにくいこと,このままでいいのか?などの不安をセラピストも患者も感じながら時が流れてしまいます.
その中で,どのようにしたらこれらの問題が解決できるのか?を考えていくと,やはり,クライエント中心という概念がなければ難しくなります.それは,いったい誰の,何のために行われるリハビリテーションなのか?ということに尽きると思います.
近藤昭彦先生のお話では,この流れを非常にわかりやすく解説していただき,目指す目標はトップダウンでしっかりと定め,理想を掲げ,その理想に向かうために,患者と情報を共有する.その中で,患者自信が行う役割と,セラピストが行う役割をしっかりと明確にすることで,協働しながら進む.医学的な知識や技術をセラピストは提供し,それを生活の中で患者自身が実践する.究極の作業療法を実例を多く提示しながらお話をして頂きました.
作業療法士として,患者にどのようなことを提供できるのか?どのように役に立つことができるのか?非常に興味深いお話をお聞かせいただきました.大変貴重なセミナーになったのいではないでしょうか?
また近藤昭彦先生より,定期的に私たちOT研究会の成長と発展にご協力いただけるとのことをおっしゃっていただきました.
今後ともOT研究会をよろしくお願いいたします.
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